さすが!プロの声 

2月6日、ソプラノ歌手津田裕子さんとバリトン歌手ローレンス・クレイグ氏のデュオのコンサートを聴きに行った。お二人とも昨年の9.11メモリアル風の環コンサートに参加してくれた実力派の声楽家である。モーツアルトのドンジョバンニやビゼーのカルメンなど親しみのある曲が次々と披露されお二人の素晴らしい“声”を楽しませていただいたが、何といってもクライマックスは最終曲のポギーとベスだろう。実は私はこの歌には特別な思い入れがある。学生時代の最後の定期演奏会に正指揮者として最後に振った曲がポギーとベスだったからだ。最初の「サマータイム」はあまりに有名だが、当時この作品はオペラなのかミュージカルなのか、はたまたソウルミュージックかという論議があった。私はそのようなジャンルを超越した男声合唱作品に仕立て上げたいと思い、私なりに努力したけれども結局はソリストとしてよんだオペラ歌手の歌い方を変えることはできず“オペラ”のイメージが強く残った出来になってしまったように思う。今回、深みのある声の幅を持った津田さんとまさに黒人ソリストのローレンスがどういう歌い方をしてくれるのか本当に楽しみだった。結果はまさに私の期待したとおり、ジャンルを超えたポギーとベスに近いものだったと思う。とくにローレンスのポギーは圧巻。彼の表現力の豊かさには脱帽だ。朗々と歌い上げるバリトンの響きの中にも黒人特有のフィーリングが漂い“ブルース”さえ感じさせてくれる。さすが、プロだと思った。鳥肌が立ったね。一緒に歌えるものなら、、なんて思ったりもしたが「百年早い!」なんて言われそうだから止めた。“格の違い”を改めて思い知らさせたコンサートでした。

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Invitation to 2009 "Circle Wind"Memorial Concert 

[911テロ事件]

2001年9月11日全世界を震撼させる事件がニューヨークで起こりました。アメリカ同時多発テロです。3,000人以上が犠牲になり、日本人の犠牲者も24人に上りました。NYで暮らす私どもにとってこの日は忘れなれない日であり忘れてはならない日です。皆さんはその時どこにおられ何をされていましたか?日本でも大きく報道されたと思います。何処にいらしたにしても皆さんそれぞれ“その時”がまるでドラマのように鮮明に記憶に残っているのではないでしょうか。

でもあれから8年の歳月が経とうとしています。毎年“その日”になるとNYのあちこちでいろいろなイベントが行われています。当初は厳粛に犠牲になられた方々の死を悼み冥福を祈る気持ちで始められたものであるはずですが、年々それが形骸化されてしまう傾向も見受けられます。

[ご遺族の一人が作曲された“千の風”]

御遺族の一人に当時富士銀行に勤められていたご子息を9.11で失くされた住山一貞さんという方がおられます。 もともと、音楽に造詣の深い方ですが、息子さんを失くされてからはご自分の“想い”を作曲に托されるようになりました。やはり9.11でお子さんを失くされたアメリカ人の作った詩にメロディを付けたり合唱曲を作曲したりされています。そのうちの一曲が「千の風になって(A Thousand Wind)」です。Native American(作者不詳)の詩に新井満氏が作曲した「千の風になって」は日本ではあまりにも有名ですが、2002年9月11日の一周年追悼式の際、犠牲者(WTCのレストランのシェフでした)のお嬢さん(Brittany Clarkさん、当時11歳)がこの詩を朗読し人々の心を打ちました。彼女はこの時、原詩を少し変えて朗読しています。即ち “Do not cry before my graveyard”の部分を “I am with you still”と読み替えたのです。大半の犠牲者の遺体が発見されていない状況で “Graveyard” という言葉はあまりに重く受け入れがたいものだったのでしょう。Brittanyさんは I am with you still. . . .と読んだ時「父親の声を聞く様だった」と話しています。

住山さんはこのBrittanyさんが朗読した詩に共鳴され(住山さんのご子息の遺体も発見されていません)この詩に曲を付けられました。新井満氏作曲の朗々と歌われる「千の風」と違って、住山さんの「千の風」は8分の6拍子の軽快に流れるリズムにのって悲しみをさらりと歌い上げた名曲です。私はこの曲の持つ“祈り”“希望”そして“力強さ”に感動しました。合唱を愛する仲間たちと住山御夫妻の前で歌ってあげたいと思いました。そして犠牲者を心から悼み、ご遺族の悲しみに心を致す、小さくてもいい、立派でなくてもいい、しかし心に残るメモリアルコンサートを開催することを企画させていただきました。

[第一回 メモリアル 風の環コンサート]

この呼びかけにNYで活躍するたくさんの音楽家の方々に賛同していただきました。なんと15人ものプロのアーティストが会場であるダウンタウンの小学校に駆けつけてくれたのです。勿論皆さんボランティアです。ソプラノソロ、バリトンソロ、ピアノ、バイオリン、ジャズ、沖縄三線、ゴスペル、等々、実に多彩な顔ぶれでバラエティーに富んだ楽しいコンサートになりました。勿論、住山さん作曲の「千の風」もご本人の前で男声合唱で披露することが出来ました。

[第二回コンサートへのお誘い] 

私たちはこのコンサートを一回で終わらせるのではなく今後も続けていきたいと考えています。継続していくことに大きな意義があると考えているからです。そしてNYだけでなく世界中の音楽を愛するたくさんの仲間に集まってほしいと考えています。プロ、アマを問いません。ご出演に興味のある方はご一報ください。お一人(一グループ)10分程度での演奏時間ということ以外に特に制約はございません( ただし、時間の関係で全員の方々に御主演いただけない場合もありますので予めご了承ください)。また、実際にステージに上る演奏家だけでなく、会場に足を運んでいただける方もお誘いしています。去年はたくさんの方に集まっていただきました。今年はもっと大勢の方に聴きに来て頂いて、9.11の“その日”にここNYでご遺族の皆様と共に素晴らしい音楽に浸っていただきたいと思います。


平成21年2月3日

9.11メモリアル 風の環コンサート
音楽監督 
白田 正樹
Mike.s@hotmail.co.jp


[The Tragedy of 911]

It happened right here in New York - a terrible incident that shook the world. More than 3,000 people died and 24 Japnese victims were among them. That day, September 11, is not forgettable for most people living in NY city. In fact, it should not be forgotten. Where were you then? What were you doing? Wherever you were or whatever you were doing at that moment, this must be something that remains in your heart vividly just like a drama.

Now several years have passed. A variety of events are held in New York on this day every year. These events must have been held, at least at the first few years, for the purpose of praying for the victim's souls in peace. However, some events seem becoming routine ceremonies or even like festivals.

["A Thousand Winds" Composed by A Victim's Father]

I happened to know Mr. Kazusada Sumiyama who lost his son in the 911 incident. Mr.Sumiyama likes music and he started composing songs expressing his grief and his passion in them. He also put some melodies to lyrics written by an American who also lost his child in the tragedy. One of Mr. Sumiyama's masterpieces is "A Thousand Winds". A song "A Thousand Winds" composed by Mr. Man Arai is already well known in Japan. Mr.Arai tranlated a poem written by a native American (anonymous) into Japanese and put a melody on it. At the one-year anniversary of the 911 tragedy in 2002, Ms. Brittany Clark, a 11 years old daughter of a victim (who was a chef of a retaurent in WTC), read the poem. People attended the ceremony were so moved by her reading especially when she changed an original phrase of "Do not cry before my graveyard" to "I am with you still". The word "graveyard" must have been something intolerable for her in a situation that her father's body was never found yet. Ms. Brittany mentioned later "I felt I heard my father's voice when I was reading the line.
Mr.Sumiyama had a great sympathy with her reading as his son's body was not found, either, and decided to compose a song based on the slightly modifed poem. Unlike Arai's "A Thousand Winds", Sumiyama's "I Am With You Still" is rhythmic and swinging in six-eight time. I was moved by the piece as I felt "a prayer", "a hope" and "a strong message" there. That is why I planned this concert. I wanted to sing Mr.Sumiyama's "I Am With You Still" with my colleagues in men's choir hopefully in front of Mr.& Mrs. Sumiyama. Concert does not have to be gorgeous. It can be small and simple. All I want is a serene and healing moment and space with music that could be shared with the victoim's families on that day.

[The First "Circle Wind" Memorial Concert in 2008]

More than 15 professional artists and musicians in NY area ( and a J-pop singer from Japan) participated in the first concert that was held in the evening of September 11, 2008 at an auditorium of an elementary school downtown New York. They were all volunteers. The concert was filled with a variety of live music, such as jazz, gospels, piano, violin, classic vocals (soprano & baritone solo), standard vocals and men's choir. Mr. Sumiyama's "I Am With You Still" was sung by a male choir at the end of the concert before him.

[The 2nd "Circle Wind" Memorial Concert in 2009]

We don't think that this concert should be an one-time event. We believe that this should go on every year. We see a great significance in continuing it. We would welcome people who love music not only in NY but from all of the world. It doesn't matter if you are professional or amateur. No special restrictions on your performance as long as it is appropriate to this concert. Your performance may be limited to about 10 minutes. However, it is only 2.5 hours concert with 15 minute intermission and we may have to decline your participation if we were fortunate to have had enough artists for the 2.5 hour performance.
We would also welcome volunteers to help us manage and support the concert. It would make a big difference to make the concert significant. The success of the concert should really depend on your deep compassion on the 911 tragedy as well as your love to music.

February 3, 2009

Mike Shirota
Music Director, "Circle Wind" Memorial Concert
mike.s@hotmail.co.jp




9.11バーゲン郡モニュメント 

住山さんとの出会いを書き始めると長くなってしまいます。今は9.11テロ事件のご遺族の一人で私の大学の大先輩とだけ申し上げておきましょう。そして音楽とくに合唱を愛するという共通点でも結ばれているということ。
コンサートの翌々日、NJ州バーゲン郡の9.11のモニュメントに住山さんご夫妻をお連れした時の写真です。バーゲン郡では200人近い方が亡くなりました。日本人が4人。住山さんのご子息もそのお一人です。ここオーバーペック公園には子供たちが小さい頃私どもは家族でよく遊びに来ていました。そこにこんな立派なモニュメントが建てられていたこと、恥ずかしい話ですがこの日まで知りませんでした。石碑にはバーゲン郡の犠牲者全員の名前が刻まれています。フロアーとなっているレンガにも犠牲者の名前が刻まれたものがありました。澄み切った青空の秋晴れの午後のひと時をご夫妻とマッタリとした時間を過ごすことができました。とりとめのない話をする中で何か心が洗われているような不思議な気持ちになりました。高田三郎の合唱曲の傑作「風が」の中の“人は見えない時間に包まれている、、、”というメロディーが何度も私の頭の中をよぎっていきました。

住山、1

住山、4

住山、2

住山、3

住山、5